
新潟県の令和7年度産米の「1等米比率」は、県の発表によると9月末現在で
- コシヒカリ:79.1%(前年比 +5)
- こしいぶき:67.7%(-22.3)
- 新之助:99.5%(+1.5)
という状況です。
こしいぶきにおいては大きくポイントを落としましたが、これは7月の高温少雨が影響したものと思われます。
全国のうるち米における1等米比率は66.5%と平年並みになっています。
また、収量に関しては令和7年度産米から従来の「作況指数」から「作況単収指数」に変更されました。
これは収量全体を表す方式から単位面積当たりの収量を比較する方式に変わったものですが、どちらもふるい目幅の基準が1.7㎜となっており現実にそぐわない結果が出やすい状況に変わりません。
何件かの農家さんに聞いたところでは、おおよそ平年並みの収量とのことです。
この1年の稲作を振り返りながら、来年以降の稲作に役立つ情報をご紹介できればと思います。
育苗
令和7年4月は曇り、雨の日が多かったです。
平年に比べてハウス内の温度が上がりにくかった分、徒長苗になるリスクが減少しました。
発芽のタイミングが遅くなり心配する農家さんもいましたが、結果的には草丈のちょうど良い苗に仕上がっていました。
近年に比べて育苗はうまくいったと思われます。


もちろん、良質な苗に仕上げるための管理は温度以外にも様々あります。
施肥管理については、1.5葉期頃に「(細粒)マグホス」や「(細粒)ミネラル宝素」の追肥を行うことで、有効な根の発根を促進し、硬く丈夫な体つくりを助け、軟弱徒長を抑制します。
5月 ~土の中はどうなっているか~
5月の連休中は天気予報では雨マークが多く心配でしたが、実際には晴れ間も続き問題なく田植えが出来ました。
しかし、大きな問題が田植え前に起こっていたのです。
育苗の章で「4月の天気は曇り、雨の日が多かった」といいました。
そのせいで土がなかなか乾かず、耕運が出来ない状態が続きました。
とはいえ田植えのスケジュールが決まっている都合上、いつまでも土が乾くのを待っていられません。
やむを得ず乾かないままの土を耕運している圃場があちこちで見られました。
そのせいで土の中は「酸欠」になりやすい悪条件になってしまっていたと思われます。


案の定、田植え後の苗はいつまでも根が張れず初期生育が滞っていました。
根が動かない事には肥料に食いつくことが出来ません。
落水して土を乾かし、酸素を補給してやることでようやく活着できました。
令和7年においては、5月も曇天が多く日照不足も初期生育不良の一因だったと思われます。
田植え後はいかにスムーズに活着させるかが課題となります。
地温を上げ、根の周りの環境を良くしてあげることを心がけましょう。
その為には「浅植え」と「短期の落水」が効果的です。
6月、7月 ~高温少雨の影響~
6月に入っても快晴の日が少なく、ゆっくりと生育が進んだせいで稲のチッソの消化も遅れたようです。
色の出方がどうも例年とは違って感じました。穂肥までに色が褪めてくるのかと心配でした。
そんな中、気温は令和6年と同様に6月の中旬から上昇を始め35℃になる日もあるほどの異常高温が多発しました。
そして令和7年の最も特徴的だった月が7月でした。
から梅雨というレベルでは表せないくらい、雨が全く降りませんでした。
新潟県の月間降水量は3.5㎜!!
気温も連日30℃を超え、人間にとってもかなり過酷な1ヵ月でした。


水が来ない、水管理を怠った圃場は枯れかかっている稲もありました。
色が褪めるかと心配していた稲はしっかりとチッソを消化したようで、穂肥診断時(コシヒカリ)には草丈は75~80㎝で、穂肥は2回投入できる姿でした。
節間について、第4節と第3節は安全圏の長さでした。
ただ、例年に比べて「第5節」を確認できる圃場が多かったのが、順調な生育が出来ずに苦労をした証拠だったのかと思います。

健全な生育の為の手段として①「溝切り」の実行 ②「マグホス」の施用などがあります。
①溝切りを行うことで、水を入れるのも落とすのも確実に、そして素早く実行できます。
入排水時の水口と水尻の時間差を少なくすることで出来のムラも抑えられます。
②調節肥として「マグホス」をしっかり施肥することで、根張りの促進と倒伏防止が期待できます。
リン酸、苦土、石灰、ケイ酸や各種微量要素の働きで発根を促し、チッソの消化を助け、節間の伸長を抑制し、健全で葉肉の厚い稲体づくりを促進します。
使用時は1反あたり40㎏を目安に施肥するのが条件です。
8月 ~熱帯夜と高温対策~
7月からの高温と水不足が続くのかと心配していましたが、8月5日にようやくまとまった雨が降りました。
待望の恵みの雨でしたが、もう少しはやく雨が降ってくれていたらどんなに助かっただろうと思うばかりです。
出穂時の水不足と高温障害により稲には大きなダメージを与えました。
特に早生品種への影響は大きかったようで、今年度の1等米比率の低下を招きました。
また、近年は毎年触れていますが今年も「熱帯夜」が続きました。
熱帯夜は昼間作ったデンプンを消耗してしまい、稲は弱ってしまいます。
そんな中「ファイトアップ」を投げ込んだ圃場は、稲刈り時までしっかりしていて倒伏もなく、収量はアップしました。

「ファイトアップ」は高温障害の救世主になりそうです。
来年はぜひお試しください。
米穀を取り巻く情勢はなかなか落ち着きを見せず、気象も毎年千変万化していきます。
状況に合わせた適切な対策を知っているのと知らないのでは、結果が大きく違ってきます。
当店はどんなときにも安定した収量・品質を保てるような稲作を実践できるように今後も情報発信をするとともに問診や指導を行っていきます。
一緒に「良食味・多収穫」を目指しましょう!