08_稲作の第一歩「稲の品種選び」初心者向け極意 | 有限会社 百津屋商店

08_稲作の第一歩「稲の品種選び」初心者向け極意

初めての稲作にチャレンジする皆さん、ゆるっと農業入門をご覧いただきありがとうございます。

これまでのテーマでは、稲作にとって土壌がなぜ大事なのか、土壌を知ることでもたらされる大きな影響、土壌改良で導かれる稲作成功への道などを学んできました。

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さて、稲作の勉強を始めてみると、その奥深さに驚かれる方も多いのではないでしょうか。
いよいよ土作りを離れ、稲に関してのテーマに入ります。

テーマ⑧

稲の品種・種もみ選びの重要性

初心者にとって最初の悩みとなるのが「稲の品種選び」です。

作付けする品種の選択は稲作の成否を大きく左右する非常に重要なポイントです

稲の品種にはそれぞれ異なる特徴があり、選び方一つで収穫の量や質が大きく変わってきます。
そして農家の収入にも大きく影響します。

そこで今回は、稲作初心者の皆様に向けて、「稲作の品種選びで失敗しないためのヒント、そしてコツ」を余すことなくお伝えしていきます。

稲品種選びの重要性 - 稲作成功の鍵を握る

なぜ稲の品種選びが重要なのか?

稲作における品種選びは、おそらく皆さんのご想像以上のものです。 品種によって、成長の速さ、耐病性、気候適応性、そして何よりも収穫量と品質が左右されます。

つまり、品種選定の時点ですでに稲作農家の収入にも深く関係しています

特に初心者の方は、地域の気候や土壌に合った品種を選ぶことで、初年度からの成功率を高めることができます。

品種選びが重要な理由は、大きく分けて二つあります。

1. 稲を栽培する環境との適合性

日本は南北に長く、気候や土壌が地域によって大きく異なります。
そのため、どんな品種でもどこでも育つわけではありません。
例えば、寒冷地で暖かさを好む品種を育てようとすると、寒さで枯れてしまったり、逆に温暖地で寒冷地に向いた品種を育てると、十分に成熟せず収穫量が減ってしまう可能性があります。
各県ごとに”奨励品種”があると思われますので、そちらを調べてみるのも品種選びのヒントになるでしょう。
当店が所在する、米どころ新潟県の推奨品種の例を後ほどご紹介いたします。

自分が稲作を行う地域の気候や土壌の特性を理解し、それに適した品種を選びましょう。

2. あながた目指したいお米とは?

収穫する稲の用途によっても、適した品種は異なります。
例えば、食用としての米質を重視するのであれば、味や粘りが良い品種を選ぶことが大切です。
また、飼料用や加工用として使用する場合は、その用途に適した特性を持つ品種を選ぶ必要があります。

特に多いのは食用かと思います。
お米には、粘り気や甘み、香りなど、品種ごとに異なる個性があります。
また、食味だけでなく、収穫時期や耐病性、栽培の手軽さなども品種によって異なります。
高品質な米を求める場合は、品質重視の品種を選ぶことが大切です。
一方で、大量生産を目指す場合は、生産量が多く安定した品種を選ぶことが望ましいです。

つまりは、自分自身がどのようなお米を作りたいのか、どのような環境で作るのかを明確にし、それに合った品種を選ぶことが必要不可欠なのです

稲品種の特徴とその影響 - 知っておきたい基本知識

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理想の品種を選ぶには

品種選びで失敗しないためのヒントを探っていきましょう。
稲の品種にはさまざまな特徴があり、それぞれ異なる利点と課題があります。
例えば、短期間で収穫できる早生種、高温に強い品種、病害に強い品種など、それぞれの特徴を理解することが重要です。

稲の品種選定のポイント1:主な種類・用途を知る

まず、稲の品種は、大きく「食用米」と「酒米」と「飼料用米」に分けられます。

  • 食用米:普段の食事で用いられる標準的な米。多くの料理に合う均衡した味と粘りが特徴。
  • 酒米:日本酒を造るための特別な米。大粒で中心部が広く、高品質な酒造りに必要。
  • 飼育用米:畜物の餌として用いられる米。食用には適さないが、畜産用に栽培される品種もある。

食用米はさらに「うるち米」と「もち米」に分けられます。  

  • うるち米:普通のご飯やおにぎりに使う米  
  • もち米は:お餅やおこわなどに使う米

お米は炊くだけにとどまらず、最近では「米粉」への注目も集まってきています。
お米を粉末にした米粉の用途も多岐にわたり、無限の可能性を秘めています。

食用米は、「早生種」「中生種」「晩生種」にも分けられます。  

  • 早生種(わせしゅ):収穫までの期間が短い。早い収穫が可能で、早い時期の出荷に適している
  • 中生種(なかてしゅ):標準的な成長期間を持つ。安定した収穫量と品質が期待できる。  
  • 晩生種(おくてしゅ):収穫までの期間が長い。成熟に時間がかかるが、品質が高まることが多い。

この時点の選択により、収穫米の販売先、土作り、育成方法などがそれぞれ変わってきます。
自分の栽培スケジュールや収穫計画に合わせて、最適な品種を選ぶことが重要です。
皆さんがイメージしている米作りはどのようなお米でしょうか?

稲の品種選定のポイント2:地域、気候に合わせた稲品種選び

日本は北から南まで気候が異なるため、それぞれの地域に適した稲品種が存在します。
地域の気候や土壌の特性を理解し、それに合わせた品種を選ぶことが大切です。

例えば、

  • 寒冷地や標高の高い地域では、耐寒性に優れた品種
  • 高温多湿地帯では高温に強い品種
  • 土壌の柔らかい圃場では耐倒伏性の高い品種を選ぶことが多いです。

ここでは、各地域別の奨励品種は割愛いたします。
ぜひ皆さんの地元の農協や熟練農家からのアドバイスも参考にしてみてください。
積極的にコンタクトをとることをおすすめします。

そして、新潟県のことであれば当店にもご相談ください。
当店がおすすめする食用米品種の一例です。

推奨品種例1: コシヒカリ

  • 理由: 日本全国で広く栽培され、特に新潟県では最もポピュラーな品種。
  • 栽培のしやすさ: 耐冷性に優れ、新潟県の気候に適応しやすい。
  • デメリット、懸念点: 病気にやや弱く、特にいもち病への対策が必要。

推奨品種例2: 新之助

  • 理由: 新潟県で開発された比較的新しい品種で、良質な米が期待できる。
  • 栽培のしやすさ: 高温に強く、耐倒伏性も高い。
  • デメリット、懸念点: 病気に弱い、県の定めた品質基準を満たす必要がある。

※実際には、田んぼの状況、目指す米、農業経験などをヒヤリングした上でご案内いたします。

稲の品種選定のポイント3:目指すお米の特性を考える

子どもの頃から言われていた「どうなりたいのか?」というような目標設定です。
食用米の場合、粘り気のあるもちもちとした食味のお米が良いのか、あっさりとしたお米が良いのか・・・。
収穫時期はどのタイミングを狙うのか? 最重視するのは「収穫量?」「食味や食感?」「希少性?」「栽培のしやすさ?」など、
どれも満点を目指したいのは山々ですが、初心者はとくに最重要視する点を決めておくと進むべき方向が見えやすくなります。

自分自身の好みや栽培目的を明確にしましょう。

稲の品種選定のポイント4:最新の品種情報をチェックする

稲の品種は年々進化しており、新しい品種が次々と開発されています。
近年は新品種でも耐病性や耐倒伏性に優れたものが開発されており、チェックしてみる価値があります。

注意点:耐病性や耐虫性などの特性を確認する

稲はさまざまな病害虫に影響されやすいため、選定する品種の耐性を確認することが重要です。
そのため、病害虫に強い品種を選ぶことは、農薬の使用量を減らし、安全な稲作へつながります。

品種の特性を理解し、適切な管理・防除をしてあげることが大切です。

ここまで、稲の品種選定のポイントをいくつかご紹介しました。
焦らず長い目で試していくことも一つの方法です。

一つの品種だけにこだわらず、複数の品種を試してみることもご検討ください。
同じ環境でも、品種によって生育状況や出来栄えは異なります。
異なる品種はそれぞれ特有の特性を持ち、それらを実際に比較することで、自分の条件に最適な品種を見つけることが可能になります。

最初は少なめの面積で良いので、複数の品種を試してみるのも、自分と土地に合った品種を見つける良い方法です。

まとめ

稲作初心者が稲作を成功させるためには、品種選びが非常に重要です。
地域の気候や土壌を考慮し、収穫目的に合わせた品種を選ぶこと、さらに実際に複数の品種を試してみることが肝要です。
また、最新の品種情報を常にチェックすることで、最適な稲作戦略を立てることができます。

自分自身と向き合い、環境と対話し、そして知識を積み重ねながら、最適な品種を選ぶことが、豊かな収穫と稲作の楽しさにつながります。
稲作は一朝一夕に身につくものではありませんが、正しい知識と方法で臨めば、誰もが成功の道を歩むことができます。

今回ご紹介したポイントとコツを参考に、自分に合った稲の品種を選んで、ぜひ稲作を始めてみてください。

「自分が目指す米作り」を明確に掲げてスタートしましょう。


そして、初心者にまず必要な知識は、「土壌を正しく知り、正しく管理」です。

ゆっくりと学んでいきましょう。

補足

  • 本記事はあくまでも一般的な指針であり、地域や品種、栽培方法によって最適な方法は異なります。専門家への相談や地域の慣習を参考に、臨機応変に対応してください。
シリーズについて
「年齢不問!稲作で食べていく!農業0~1年生×稲作×土づくりをしっかり学ぶ15本」
このシリーズは、稲作について何から手をつければよいか分からない農業未経験・稲作農業0〜1年生のための基礎ガイドを投稿しています。
なんとなく稲作農業に興味が湧いてきた、異業種から農業に意を決して転身、代々農家の後継ぎを決意、農業無知で稲作農家に嫁ぐ・・・などきっかけは様々でOK。
基本から学ぶ土作りのステップをなるべく楽しく学べて実践へ活かせるように、わかりやすく解説していきます。
稲作初心者の方のお役に立てたら何よりです。

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百津屋代表

百津屋商店 代表:和田 一男

新潟県で50年。
稲作の教科書に載っていない秘訣を伝授します!
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著者情報

和田 浩一

和田 浩一

2005年に入社し、施肥技術指導員、一般毒劇物取扱者の資格を取得。
お客様の田んぼや畑でのお悩みを聞き取り、わかりやすい指導を心がけています。 ホームページにて農家の皆さんのお役に立てる情報記事を発信中。

趣味で事務所に展示しているメダカ・熱帯魚水槽にはお客様から「癒される」とお褒めいただいています。

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