07_稲作初心者必見!土壌病害を知り予防する基礎知識 | 有限会社 百津屋商店

07_稲作初心者必見!土壌病害を知り予防する基礎知識

初めての稲作にチャレンジする皆さん、ゆるっと農業入門をご覧いただきありがとうございます。
このシリーズが、稲作初心者の方へ有益な情報となり、豊かな収穫と収益へと繋がることを願っています。

テーマ①では「土壌の基本:稲作における土の役割と影響とは」
テーマ②では「稲作向け土壌のタイプと特性」
テーマ③では「稲作向け土壌改良の重要性とポイント」
テーマ④では「稲作土づくり成功の鍵:有機物の重要性」
テーマ⑤では「稲作初心者が知っておくべき土壌改良材・肥料の基礎知識」 を学びました。

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ところで皆さんは自分の健康管理のためにやっている対策はありますか?
運動や食事管理、サプリ摂取をしている方もいらっしゃるかもしれません。
それでも人生で、病気にかかったり怪我をしたり風邪をひいてしまう経験はあるかと思います。
稲作の土壌においても、人間同様に健康管理は非常に重要です。

多くの初心者農家が直面する課題の一つが土壌病害です。
今回のテーマでは、土壌病害の基本知識、予防方法、そして健康な土壌を維持するための実践的なコツを紹介します。

田んぼの土壌病害とは?

[2021-08-02] (1)

土壌病害は稲作において大きな課題であり、稲作農家の収入にも直接影響を及ぼします。
これは土中の病原菌や環境要因によって発生する稲の病気で、イモチ病、紋枯病などが代表的です。
これらの病害は稲の成長を阻害し、収穫量を減らすことがあります。
この収穫量の減少は、農家の収入減に直接つながるため、土壌病害の予防と管理が不可欠です。

稲作における代表的な土壌病害

土壌病害の初期症状を把握する

稲作においては、土壌病害は収穫量や品質を大きく左右する重要な課題です。
またまた人間の例えになりますが、病気や風邪は初期症状で気づくと早めのケアで重症化阻止につながりますよね。
土壌病害も、初期症状に気づくことができれば、適切な対策を講じることで、被害の最小化につながります。

定期的な田んぼの観察

  • 田んぼの観察: 定期的に田んぼを歩き、稲の成長状態や葉の色、形状を注意深く観察します。
  • 症状のチェック: 稲の葉や茎、根に異常がないか、特に病気の主な症状(斑点、枯れ、変色など)をチェックします。

土壌病害が発生した場合、主な初期症状は、葉に小さな斑点や黄化、枯れなどの症状が現れます。
これらの症状に気づいたら、すぐに原因となる病原菌を特定し、適切な対策を講じましょう。

以下に、よくある田んぼの土壌障害の例をご紹介します。

イモチ病

発生時期、部分により「苗いもち」「葉いもち」「穂いもち」「節いもち」とも呼ばれます。

  • 初期症状: 褐色〜白い斑点が現れる
  • 稲への影響: 生育不良、葉の枯死、収量減少
  • 原因: いもち病(カビ菌)病原菌による感染、窒素過多、多湿、日照不足、密植
  • 対策例: 被害株を除去、適切な薬剤散布、耐病性品種の使用

紋枯病(もんがれびょう)

  • 初期症状: 水際に近い葉鞘部分に灰緑色の楕円状斑点が現れる
  • 稲への影響: 葉の枯死、倒伏、品質低下
  • 原因: 紋枯病菌(糸状菌)が水面近くの葉鞘に感染、高温多湿・多窒素で促進
  • 対策例: 適切な水管理、薬剤散布

墨黒穂病(いねすみくろほびょう)

  • 初期症状: 籾の中に充満した厚壁胞子が黒く透けて見える
  • 稲への影響: 著しい品質の低下
  • 原因: 土壌中の病原菌(カビ菌)による
  • 対策例: 薬剤散布、適切な湿度管理、耐病性品種の使用

稲こうじ病(いなこうじびょう)

  • 初期症状: 乳熟期頃から内外穎が少し開いて緑黄色の突起が現れる
  • 稲への影響: 倒伏、品質低下
  • 原因: 土壌中の病原菌による
  • 対策例: 薬剤散布、土壌改良

土壌病害の主な原因は、土中の病原菌や害虫、過剰な湿度、栄養の過不足などです。
これらは稲を弱らせ、成長を妨げる原因となります。

稲の病害を防ぐための基本的な方法

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初心者向け 稲の病害予防法

基本的に作物において病害は、発症してしまった部分に対して、薬剤などで進行を止めることはできますが治癒することはできません。
つまり、予防が何よりも大切なのです。
土壌病害を予防するためには、以下のような方法が効果的です。
下記の具体例は一例に過ぎませんので、ご参考にされてください。

稲の病害予防例

田んぼの適切な水管理

  • 対策: 水はけが悪いと病原菌が繁殖しやすくなるため、排水対策を行う。
  • 具体例:田んぼの周囲の畦畔を整備し、水が流れやすいようにする。
  • 期待できる効果: 稲の根系の健康維持、病原菌の発生と繁殖の抑制。

栄養バランスの良い肥料の使用

  • 対策: 窒素肥料の過剰施肥は病原菌の繁殖を促進するため、適切な量の肥料を施す。
  • 具体例:窒素、リン酸、カリウムのバランスが取れた化成肥料を適量施用。また、有機肥料の併用で土壌の微生物活動を促進。
  • 期待できる効果: 稲の健康強化、免疫力の向上。

種子の選択と処理

  • 対策: 病気に強い種を選び、種子を植える前に適切な処理(消毒など)を行う。
  • 具体例:イモチ病に強い品種の種子を選択し、播種前に種子消毒剤で処理。
  • 期待できる効果: 種子からの病気伝播の防止、苗の健康な成長。

清潔な田んぼ環境の維持

  • 対策: 収穫後の茎葉や雑草を取り除き、田んぼ周辺の清掃を定期的に行う。
  • 具体例:収穫後に残る稲わらを取り除き、焼却または堆肥化。畦の草刈りを行い、病害の隠れ家を除去。
  • 期待できる効果: 病害の温床の除去、病原菌の拡散防止。

ほ場の均平化と雑草防除1

  • 対策: ほ場の均平化+除草剤の適期防除で雑草対策
  • 具体例:ほ場に凹凸があると、凸部から雑草が繁茂しますので、ほ場の均平に留意する。
  • 期待できる効果:雑草繁殖の防止

土壌消毒

  • 対策:土壌消毒剤を散布することで、病原菌を殺菌する。
  • 具体例:稲刈り後に、土壌消毒剤を散布する。土壌消毒剤は、農薬取締法で指定された、安全性の高いものを使用するようにする。
  • 期待できる効果:病原菌の根絶、病害の発生を予防。

このように、劇的に難しい対策はほとんどありません。
「土壌環境の改善」と「病原菌の繁殖抑制」を両面から行うことがポイントです。

まとめ

稲作における土壌病害は、収穫量減少や品質低下などの大きな被害をもたらします。
田んぼの土壌病害は、様々な原因によって発生します。
それぞれの病害の症状、原因、対応作、予防方法を理解し、適切な対策を講ずることが重要です。

上記以外にも、様々な土壌病害や土壌障害があります。
初心者は特に、分からないことは先輩農家、専門店、そして当店にご相談ください。

これらの情報とアドバイスを活用して、稲作における土壌管理の基本を身につけ、健康な土壌を作ることで、稲作の成功に一歩近づきましょう!
この記事が、あなたの稲作活動において有益な情報となり、豊かな収穫へと繋がることを願っています。

毎回繰り返して唱えます、
初心者にまず必要な知識は、「土壌を正しく知り、正しく管理」です。

ゆっくりと学んでいきましょう。

補足

  • 本記事はあくまでも一般的な指針であり、地域や品種、栽培方法によって最適な方法は異なります。専門家への相談や地域の慣習を参考に、臨機応変に対応してください。
  • 土壌改良材や肥料は、使用量や使用方法を間違えると反作用を招く恐れがあります。必ず使用方法を遵守し、安全な稲作を心がけてください。
シリーズについて
「年齢不問!稲作で食べていく!農業0~1年生×稲作×土づくりをしっかり学ぶ15本」
このシリーズは、稲作について何から手をつければよいか分からない農業未経験・稲作農業0〜1年生のための基礎ガイドを投稿しています。
なんとなく稲作農業に興味が湧いてきた、異業種から農業に意を決して転身、代々農家の後継ぎを決意、農業無知で稲作農家に嫁ぐ・・・などきっかけは様々でOK。
基本から学ぶ土作りのステップをなるべく楽しく学べて実践へ活かせるように、わかりやすく解説していきます。
稲作初心者の方のお役に立てたら何よりです。

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百津屋代表

百津屋商店 代表:和田 一男

新潟県で50年。
稲作の教科書に載っていない秘訣を伝授します!
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著者情報

和田 浩一

和田 浩一

2005年に入社し、施肥技術指導員、一般毒劇物取扱者の資格を取得。
お客様の田んぼや畑でのお悩みを聞き取り、わかりやすい指導を心がけています。 ホームページにて農家の皆さんのお役に立てる情報記事を発信中。

趣味で事務所に展示しているメダカ・熱帯魚水槽にはお客様から「癒される」とお褒めいただいています。

  1. ⽔稲栽培のポイント(農水省HP) ↩︎
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