11_稲作の成功を握る!種まきの秘訣とポイント | 有限会社 百津屋商店

11_稲作の成功を握る!種まきの秘訣とポイント

初めての稲作にチャレンジする皆さん、ゆるっと農業入門をご覧いただきありがとうございます。
美味しいお米が実りそうでしょうか?

これまで、稲作にとって土壌がなぜ大事なのか、土壌を知ることでもたらされる大きな影響、土壌改良で導かれる稲作成功への道などを学んできました。

復習はこちら

前回の記事では「種まきのタイミングを見極める秘訣」を学びました。
いよいよ種まきです。
種まきは、適切な手順とポイントを抑えることで、豊作への土台を築く大切な工程です。
この記事では、稲作初心者の方に向けて、種まき当日の具体的な流れ、そして注意すべきポイントについて詳しく解説します。

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稲作・種まきの流れ、注意点など

種もみを芽止めまでして膨らんだとはいえ、まだまだ小さな種もみ。
その小さな粒の中に無限の可能性が詰まっています。

前回の記事でもご紹介した通り「苗半作」という言葉を忘れずに取り組んでみてください。

ここでは、床土、潅水、播種、覆土までできる「播種機」を使用する場合の種まきについて記載いたします。

稲作・種まき事前準備

妥協しない準備が健苗へ導く

種まきを始める前に、必要な道具と材料を準備しましょう。

  • 種もみ(催芽済み)
  • 水稲用育苗培土(床土・覆土)
  • 水稲用育苗箱
  • 播種機

種もみの催芽のやり方はこちらで復習
>> https://momozuya.com/nougyonyumon/tanemakimaenojunbi/

土の準備ポイント

水稲用育苗培土は高温殺菌・造粒した土で、苗の生長をサポートし、健康な根系の発展を促します。
土の質は、苗の生育にとって非常に重要です。
水稲用育苗培土にも様々な種類があり、商品選びには注意が必要です。

  • 無肥料の商品には自分で肥料を配合する
  • 粘土が強すぎて水はけが悪い商品に注意
  • 商品選択基準:粒の大きさ、水分、適切なpH(4.0~4.5)のものを選ぶ

育苗培土は健全な苗を育てるために必要不可欠であり、最終的な収穫量や品質にも大きく影響します。
信頼できるお店での購入をお勧めします。

百津屋商店では「さつき焼土」と肥料入りの「苗一番」を取り扱っています。

育苗箱と播種機の準備のポイント

水稲用育苗箱は、水はけが良いものを推奨します。
育苗箱の底に穴が多いものを選び、園芸用ではないことを確認してください。
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播種機は、事前にメンテナンスを行い、不具合がないかを確認することが重要です。
これにより、播種時のトラブルを避けることができます。

種まき前の準備作業

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事前にできる作業の詳細と注意点

播種当日までに、事前にできる作業があります。
それは、「床土だけを苗箱に入れておく」ことです。
事前にやれることをやっておくことで、当日の作業量・所要時間が軽減でます。
特に作業量の多い大規模農家にとっては、助かるメリットです。

しかし、土は開封後から水分が失われていく為、事前準備は推奨してはおりません。
できるだけ当日にすべての作業を一括で行うようにしましょう。
効率化も大切ですが、種もみにとってよりよい状態で種まきをしましょう。

事前にできる作業

  • 播種機に床土だけをセットして苗箱を流す(同時に土の落ち方や厚みをチェックする)
  • 床土のみが入った苗箱を積んで保管しておく

注意点

  • 事前準備により乾燥しすぎた土は水分を吸収しづらくなる
  • 積み上げた苗箱の一番上は土の水分が蒸発しやすいので、シートで覆うなどする
  • 事前作業から種まきまでの期間があきすぎないようにする(1週間以内)

稲の種まき当日・播種機の作業

「ぶっつけ本番」は失敗のもと

いよいよ、種まき当日です。
準備を整え、できれば複数人でそれぞれの担当者を決めて段取り良く作業を進めましょう。
播種機の使い方はそれぞれの機械で違いますが、大まかな流れは以下の通りです。

  • 播種機の試運転
    • 播種機の設定確認
    • 種もみの播種量の確認
    • 潅水装置の均一性確認
  • 本番
    • 作業の流れ:床土 → 潅水 → 播種 → 覆土
    • 監視の目を多くすることが推奨される

播種機試運転から本番までの流れ

播種当日は、まずは播種機の試運転から始めます。
この時、播種機が正しく種もみを播種するか、潅水装置が均一に水を供給するかを確認します。

毎年同じ播種機の設定を使う前提で作業を始めると、微妙にズレている可能性が高く問題が生じることがあります。

そのため、必ず播種機を試運転して、全てが正しく機能することを確認後に本番作業を開始しましょう。

播種機のチェックポイント

  • 試運転での設定確認: 前年の設定を頼りにせず、ズレがないか確認します。
  • 潅水装置の検査: 全ての穴から適切に水が出るか、設定した水量が適正か確認します。
  • 種もみの播種量チェック: 空の苗箱と種もみのみをセットして、播種量を最初にチェックします。
  • 1箱分の試運転実施: 種もみまでをセットして試運転をして、土の水はけや種もみの浮きがないか、種もみが均一に播種されているかをチェックします。
  • 排土ブラシ・ローラーの調整: 覆土をセットして覆土を取りすぎてないか、残しすぎてないかを確認し、問題なければ本番作業へ移行します。

種まき本番

本番では、床土→潅水→播種→覆土の順に作業が進みます。

種まきプロセスを簡潔に解説します。

  • 苗箱に「床土」を入れ、平らにならします。(事前準備してる場合は、床土はセットしない)
  • 床土全体に水をまき、しっかりと浸透させます。
  • 「種もみ」を均等に散布します。
  • 上から「覆土」をかけ、種もみをカバーします。
  • 余分な土はブラシやローラーで除去し、軽く押し固めます。
  • 最後に、完成した苗箱を搬出します。

これで播種機使用時の一連の手順が完了します。

種まき作業のポイント

潅水(水やり)の手順
水を与えるのは、覆土を施した後ではなく、その前に行います。
最後に水をかけると覆土が泥状になり、種が酸素不足に陥るリスクがあります。
この方法により、水分が土の中で自然に上昇し、種が適切な環境下で発芽することを促します。

床土、種もみ、覆土の管理
作業中は、播種機の床土、種もみ、覆土は減り続けます。
残量を常にチェックし、不足する前に追加する必要があります。
これらの資材が減少したら迅速に補充し、作業の停滞を防ぎましょう。

必要となる体力と人
機械が一部の作業を担ってくれるとはいえ、人手は必要不可欠です。
稲の種まきは、土を補充し続けたり、水を吸った土の入った苗箱をたくさん運ぶため、体力が必要です。
種まき作業は人手が多いほど効率的に進められるため、苗箱や種、土などの補充担当もいると良いでしょう。
一家総出で取り組む農家も多く、チームワークを発揮する日となります。

注意点

  • 作業中、水洗トイレや洗濯機の使用が水圧に影響し、潅水にムラを生じさせる可能性があるため注意が必要です。
  • 播種後の苗箱は、余計な水分が排出されるまで積み重ねておきます。
  • この段階で苗箱を倒したりしてしまうと苦労が水の泡となります。細心の注意が必要です。
  • 複数の品種がある場合は、混ざらないように品種ごとに作業しましょう。

写真は一例です。

種まき後の苗箱管理

「無加温」と「加温」

苗箱はハウス・育苗機への移動

余分な水分が抜けた後、苗は2通りの行き先に移動します。

  • ハウスに並べる(無加温出芽)
  • 育苗機に入れる(加温出芽)

無加温出芽は、苗箱をハウス内に並べていき、被覆資材をかけて出芽を待つやり方です。

育苗機は、人工的に温度をかけて出芽を促進する装置です。
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無加温管理に比べて出芽までの所要時間が短縮され、出芽揃いが良くなります。

育苗機を使った時の注意点

育苗機で出芽した後は無加温の場合と同様、ハウス内に並べて管理していきますが、この時に注意することがあります。
育苗機内は暗く、そこで一気に出た芽は外からの刺激に非常に敏感です。
強い光や温度変化の刺激を受けた芽は、葉が白くなる「白化現象」がおきて生育に大きなダメージを生じます。
苗箱をハウスに並べる際は、並べながら順々に被覆資材をかけていってあげることで白化現象のリスクを減らすようにしましょう。

ここまでの多くの努力が詰まった、小さな種が芽吹く瞬間を待ちましょう。

まとめ

初めての稲作に挑戦する皆さんに向けて、種まきの流れとコツについて解説してきました。

まずは、播種機の点検と試運転を必ず行います。
その後の種まき本番では、床土→潅水→播種→覆土の順に種まきをします。

播種機の操作、苗箱の準備、苗箱運びなど、複数の仕事を同時に進めるためには、複数人での作業分担が効率的です。
役割分担を決め、十分に体力のある状態で進行したいですね。

健全な苗は、のちの生育に大きく影響し、豊作への道を拓きます。

本記事を通じて、種まきの流れと必要な準備について理解を深め、実際に稲作を始める際の参考にしていただければ幸いです。

ご紹介した土についてもお気軽にお問合せください。

補足

上記の対策はあくまでも目安であり、状況によって効果は異なります。 地域の農業指導機関や農協などに相談し、地域の気候や栽培状況に合わせたアドバイスを受けることが重要です。専門家への相談や地域の慣習を参考に、臨機応変に対応してください。

苗箱はAmazonでも手軽に購入できます。
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シリーズについて
「年齢不問!稲作で食べていく!農業0~1年生×稲作×土づくりをしっかり学ぶ15本」
このシリーズは、稲作について何から手をつければよいか分からない農業未経験・稲作農業0〜1年生のための基礎ガイドを投稿しています。
なんとなく稲作農業に興味が湧いてきた、異業種から農業に意を決して転身、代々農家の後継ぎを決意、農業無知で稲作農家に嫁ぐ・・・などきっかけは様々でOK。
基本から学ぶ土作りのステップをなるべく楽しく学べて実践へ活かせるように、わかりやすく解説していきます。
稲作初心者の方のお役に立てたら何よりです。

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百津屋代表

百津屋商店 代表:和田 一男

新潟県で50年。
稲作の教科書に載っていない秘訣を伝授します!
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著者情報

和田 浩一

和田 浩一

2005年に入社し、施肥技術指導員、一般毒劇物取扱者の資格を取得。
お客様の田んぼや畑でのお悩みを聞き取り、わかりやすい指導を心がけています。 ホームページにて農家の皆さんのお役に立てる情報記事を発信中。

趣味で事務所に展示しているメダカ・熱帯魚水槽にはお客様から「癒される」とお褒めいただいています。

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