今年の稲作も一部の晩生品種を残してほぼ稲刈りが完了していることと思われます。
例年に比べて早めに終わった方が多かったのではないでしょうか?
収量の面では発表された指数と現場での印象には大きな差があったように感じます。
新聞で発表された今年度の”作況指数”は「103」でした。が、農家さんをまわって話してみると「期待していたほどの収量はなかった。」「よっぽど条件の良い圃場で調査をしているんだろう」などの意見が多々ありました。
品質においても、”1等米比率”は去年の20%台にくらべれば今年度は70%台と回復していますが、害虫や気象の影響を大きく受けた方は少なくないはずです。
収量・品質を低下させた要因を考えてみる
7月の雨
田植えが終わってから5月、6月と穏やかな天気が続き、生育は順調でした。
ところが7月に入ると毎日のように雨が降りました。月間の”降水量”は歴代トップクラスの増加、それに伴って”日照時間”は低下しました。
雨には空気中の「チッソ」が含まれています。雨が降っている間は何もしなくても田んぼには天然のチッソが供給されるわけです。地力が足りていない田んぼでも「肥切れ」を起こすことなく生育が進みました。
その結果、多くの稲は茎数が増加し、草丈は非常に伸びました。
田植えの時点で1株当たりの植え付け本数が10本近くなっていたものは「茎数過剰」になり、過密状態の中で稲は光を求めて余計に草丈を伸ばし始めるのです。やはり『密』は避けるべきですね(笑)
ケイ酸やリン酸も十分に与えられればまだ良かったのですが、散布しようにも雨が降っているわけです。
稲はどんどん「軟弱徒長」な姿になっていきました。
8月のカメムシ
8月には雨も止んで落ち着いた天気になりました。
しかしながら今年は6月の時点で「カメムシの大量発生」の予報が出されていました。
暖冬の影響で冬を越した虫たちが数を増やし、さまざまな作物で食害を発生させていました。カメムシもその中の1つでした。
稲にやってくるカメムシは「アカスジカスミカメ」「アカヒゲホソミドリカスミカメ」といった種類で、1センチにも満たないとても小さなものが大多数です。
目で確認するのも大変ですから、見つけ次第捕まえていくなんてこともできるはずがありません。ですから防除には薬剤散布が必要となるわけです。
カメムシは針のような口を差し込んでデンプンを吸汁するのですが、小さなカメムシは出穂直後の「乳熟期」に騒ぎます。籾が硬くなってしまえばうまく口を差し込めなくなります。
薬剤は商品によって効果が表れるまでの日数や、効き目の続く期間が異なるので、タイミングを間違わずに上手に効かせるようにします。
”共同防除”の場合、ベストなタイミングを選べないということが最大の難点となります。効かせるべき時期を失ってはせっかくの薬剤が効果を発揮できません。
まして今年のように大量発生の警戒予報が出されるようなときには、やはり”個人防除”もするべきかと思われます。
カメムシに吸汁されたコメは「斑点米」という”アザ”のようなものが残ってしまい、見た目が非常に悪くなってしまいます。
検査の際に斑点米が数粒あるだけで等級が下がってしまいます。収入にも直接響いてくるものですから、しっかりと防除をしていきましょう。
打つ手はあった
今年度の収量・品質を低下させた要因の話をしてきましたが、例年と同様、または例年以上の結果を出された農家さんもいらっしゃいます。
土地柄的な条件もあるでしょう。しかしそこには確かに悪要因を回避する道はあったのです。
茎数が過剰になって草丈が伸びたことに関しては、田植の時の1株当たりの植え付け本数を3本程度に抑えることで、1本当たりの生育環境が良くなり太く、丈夫な体になります。
田植えの時に流れた苗が思わぬところで根付いて立派な株になっているように、1本の苗からでも10本以上の茎数がとれます。また、ごく浅植え状態になっていることで根の周りの環境も良く、しっかりと開帳できます。
そういったことを踏まえて田植えを行うことで今年のような茎数が取れ過ぎるような時でも”倒伏”に耐えやすい稲体に持っていきやすくなります。
施肥管理においても、元肥から「ミネラル宝素」や「マグホス」を入れておくことで十分なケイ酸・リン酸を供給することができ、健全な体作りを助けてくれます。
カメムシによる斑点米に関しては、先に話したような”適期の個人防除”を行うことで被害は激減できました。
いつもは共同防除のみで問題なかったほ場に対しても、敏感な農家さんは『今年は個人でも防除する』と取り組んでいらっしゃいました。
また、出穂までにまわりの草刈りをしておくことでカメムシの隠れ家を減らしておくことも重要な対策です。
高温対策に関しては、以前の記事でも書いたように”水管理”による地温の調節が大切です。
稲刈りのことを考えると後半に水を入れるのは遠慮しがちかと思われますが、40℃近い異常高温の際に稲を守ってあげるためには必要な対策になります。
細かなポイントを上げればキリが無くなってしまいますので、これからも1つ1つ紹介していければと思います。
さまざまな障害がやってくる昨今ですが、対抗できる手段をできるだけ用意して『良食味・多収穫』を目指していきましょう!
百津屋商店 代表:和田 一男
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