初めての稲作にチャレンジする皆さん、ゆるっと農業入門をご覧いただきありがとうございます。
土壌の中には奥深い世界が広がっていることがわかってきたと思います。
その土壌と作物の関係性もつながってきたのではないでしょうか。
稲作で食べていくため、豊かな収穫を目指してしっかり学んでいきましょう!
テーマ①では「稲作における土壌の役割と影響」
テーマ②では「稲作向け土壌のタイプと特性」
テーマ③では「稲作向け土壌改良の重要性とポイント」
テーマ④では「稲作土づくり成功の鍵:有機物の重要性」
テーマ⑤では「稲作用土壌の水はけと保水性の重要性」を学びました。
さて、土壌において、稲作の成否を決める重要な要素として、田んぼの「水はけ」と「保水性」が挙げられます。
「水はけ⇄保水性」は相反する要素であるため、バランスを慎重に調整する必要があります。
特に稲作初心者にとって、この二つのバランスを理解し、適切に管理することが成功への道筋となります。
今回のテーマでは、田んぼの土壌の水はけと保水性の基本から、その重要性、水管理テクニックなどをお伝えします。
テーマ⑥
土壌の水はけと保水性
なぜ、水はけと保水性が水田に不可欠なのか?
水はけと保水性を理解する
稲は水を必要とする作物ですが、過剰な水は根を痛め、不足は栄養吸収を妨げます。
水はけの良い土壌は根の健康を保ち、保水性の高い土壌は必要な水分を保持します。
このバランスが稲作の成功にとって重要なのです。
田んぼの保水性が悪すぎると・・・
稲は水に浸りながら呼吸ができる植物ですが、水が常に滞留すると根腐れなどの病害が発生しやすくなります。
特に、粘土質の土壌は保水性が高い一方で、水はけが悪く、根が弱り、十分な栄養や水分の吸収が妨げられます。
また、物理的に固くなりやすい土壌では、根の成長が阻害され、根腐れの危険性が高まります。
田んぼの水はけが良すぎると・・・
水はけが良すぎると、田んぼの乾きが早く稲に必要な水分が確保できず、生育障害が起こります。
特に稲の成長に重要な初期段階や穂の出る時期に乾燥が続くと、葉が萎縮し、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。
砂質の土壌は水はけが良いものの、保水性が低く、夏の高温期には乾燥しやすく、土壌の団粒構造形成が阻害されます。
理想の水はけ状態とは?
理想の保水状態とは?
水がはけすぎてもダメ、保水しすぎてもダメ・・・「ちょうど良い水はけ・保水性」の一言ではイメージが湧きません。
ではどのような状態を目指せば良いのでしょうか?
土壌の状態は、手で握ってみることで簡単にチェックできます。
水はけの適切さ
田んぼの土壌で理想的な水はけとは、灌漑後や大雨の後に水が数時間以内に排出され、土壌が適切な湿度を保つ状態です。
水はけが速すぎると栄養流失の恐れがあり、水が長時間たまりすぎると根が溺れて根腐れのリスクが高まります。
保水性の適切さ
適切な保水性とは、土壌が適度な水分を長時間保ち、乾燥せず稲の成長に必要な水分を供給する能力です。
灌漑や雨降り後に水が引いて湿った状態の土を手に取り、手で握ってもわずかに水がにじむ程度が理想的です。
土が固まるが簡単に崩れる湿度が適切です。
参考にしてみてください。
田んぼの水はけ改善
基本ステップ
田んぼの良好な水はけは、根系の健康を保ち、根腐れやその他の病害を防ぐために重要です。
特に、稲は適度な水分が必要ですが、過剰な水は根の呼吸を妨げ、成長に悪影響を与えます。
理想的な水はけ改善を実現するには、まずあなたの田んぼの土壌状態を理解することが大切です。
土壌の質(砂土・壌土・埴壌土など。参考記事はこちら)はどのような状態でしょうか?
栄養素の含有量はいかがでしょうか?
土壌分析などを依頼してみるのもいいでしょう。
田んぼの水はけ改善例
砂の添加
- 適用される土壌: 粘土質で水はけが悪い土壌
- 改良方法: 砂を土壌に混ぜ込む
- 効果: 粘土質の土壌の粒子間に空間を作り、水はけを改善する
排水システムの改善
- 適用される土壌: 水はけが非常に悪い土壌、湿地帯
- 改良方法: 溝(暗渠あんきょ排水など)を作るなどの排水システムを導入
- 効果: 余分な水分を効率的に排出し、水はけを改善する
深耕
- 適用される土壌: 土壌が硬くなりがちな土地
- 改良方法: トラクターを使用して土を深く耕す
- 効果: 土壌を柔らかくし、根の成長に必要な水はけのいい空間を作り出す
現状の土壌に不足していることを把握し、適切な水はけ改善を行っていきましょう。
田んぼの保水性を高めるには
保水性が高い土壌は、乾燥期間中に水分を供給し続けることができます。
逆に保水性が低い土壌では、水分が蒸発しやすく、作物の成長に適した環境を作ることができません。
保水性は、適切な管理によって改善することができます。
以下に、具体的な改善方法を紹介します。
田んぼの保水性の改善例
有機物の追加
- 適用される土壌: 栄養分が少なく、保水性が低い土壌
- 改良方法: 腐葉土、堆肥などの有機物を土壌に混ぜ込む
- 効果: 有機物は水分を保持し、土壌の保水性を向上させる。また、土壌の構造と通気性も改善する。
緑肥の使用
- 適用される土壌: 有機物が不足している土壌
- 改良方法: クローバーや豆科植物などの緑肥作物を育て、後に土に混ぜ込む
- 効果: 緑肥作物は土壌に有機物を添加し、保水性を高める。また、土壌の肥沃度も向上させる。
土壌の耕起
- 適用される土壌: 土壌が硬く、通気性が低い土地
- 改良方法: 定期的に土をほぐすことで土壌の密度を減らし、通気性を向上させる
- 効果: 通気性が向上すると同時に、水分保持能力も高まる。
漏水防止剤の使用
- 適用される土壌: 極端に水持ちの悪い土壌
- 改良方法: 漏水防止剤(ベントナイトなど)を土壌に混ぜ込む
- 効果: 極端に水持ちが悪い土壌は、土の目が粗すぎて水がドンドンすり抜けていっている状態です。漏水防止剤で粗すぎる土の目をふさぐことで、保水性が改善されます。
黄金のバランスを目指して
田んぼの水はけと保水性は、いわば稲作にとっての「車の両輪」。
どちらかだけが優れていてもバランスが取れていなければ、健全な稲作はできません。
理想的なのは、適度な排水能力を備えながら適切な水分を保持できる、黄金のバランスを備えた土壌です。
皆さんの土地の歴史や気候や管理によって、土壌の状態は異なります。
田んぼに合わせて土壌改良を楽しみましょう。
- 田んぼの状態を把握する
- 水はけ・保水のための土壌改良を選ぶ
田んぼの適切な水はけと保水性のバランスを維持することは、複雑なように思えるかもしれませんが、
日々の稲作の中で注意深く土壌を観察することでヒントを得ることができます。
例えば、
- 雨が降った後、田んぼの水が引くまでに時間がかかるようであれば、排水性が悪い可能性があります。
- 反対に、すぐに乾いてしまうようなら、保水性が低いのかもしれません。
- 土を手で握って形になりにくく崩れやすい場合は、団粒構造が形成されていないことを示唆しています。
このような土壌の声に耳を傾け、必要な手入れを施すことで、理想的な水はけと保水性を持つ土壌を作り、豊かな収穫に近づけられます。
まとめ
稲作を成功させるためには、土壌の特性を理解し、田んぼの水はけと保水性のバランスを最適に保つことが極めて重要です。
粘土質や砂質など、それぞれの土壌タイプに合わせた適切な土壌改良を行い、日々の水管理に気を配ることで、健全で豊作な田んぼづくりを目指しましょう。
忘れてはならないのは、土壌は単なる物質ではなく、微生物や有機物など無数の命が織りなす「生き物」であるということです。
もう合言葉のように繰り返していますが、
初心者にまず必要な知識は、「土壌を正しく知り、正しく管理」です。
ゆっくりと学んでいきましょう。
シリーズについて
「年齢不問!稲作で食べていく!農業0~1年生×稲作×土づくりをしっかり学ぶ15本」
このシリーズは、稲作について何から手をつければよいか分からない農業未経験・稲作農業0〜1年生のための基礎ガイドを投稿しています。
なんとなく稲作農業に興味が湧いてきた、異業種から農業に意を決して転身、代々農家の後継ぎを決意、農業無知で稲作農家に嫁ぐ・・・などきっかけは様々でOK。
基本から学ぶ土作りのステップをなるべく楽しく学べて実践へ活かせるように、わかりやすく解説していきます。
稲作初心者の方のお役に立てたら何よりです。
百津屋商店 代表:和田 一男
稲作の教科書に載っていない秘訣を伝授します!
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