初めての稲作にチャレンジする皆さん、ゆるっと農業入門をご覧いただきありがとうございます。
基本から学ぶ土作りのステップは実践へ活かせそうでしょうか。
テーマ①では「稲作における土壌の役割と影響」
テーマ②では「稲作向け土壌のタイプと特性」
テーマ③では「稲作向け土壌改良の重要性とポイント」を学びました。
土壌とは稲作の基盤でしたね。
今回のテーマになる「土壌と有機物の関係」は、稲作の成功の鍵を握っています。
この記事では、稲作初心者でも楽しく、そして簡単に理解できるように、有機物が土壌に与える効果を探求していきます。
稲作の基本を学んで、農業の新たな一歩を踏み出しましょう!
稲作土壌と有機物の関係
テーマ④
有機物の土壌への効果
とは言っても、「そもそも有機物は活用方法がよく分からない」という初心者の方も少なくないのではないでしょうか。
稲作にとって有機物の存在は、土壌の肥沃性を高め、作物の成長に欠かせない要素となります。
有機物が土壌に与える効果とは何か、その驚きの効果を一緒に見ていきましょう。
有機物とは・・・
有機物って何?稲作におけるその役割
有機物とは、植物の残骸、動物の糞、腐葉土など、自然界の生物由来の素材を指します。
これらの有機物は微生物によって分解され、土壌に栄養素を供給する重要な役割を果たします。
新潟県における土壌の特徴を踏まえ作成された技術指針にも以下の記載があります。
"有機物の施用効果:水田や畑地土壌への有機物の施用は、肥料として三要素と微量要素の供給源となるだけではなく、土壌の緩衝能の増大、土壌微生物活動の増強などの効果がある。有機栽培は、総合的な土づくりの上に成り立つのであって、土づくりの善し悪しが作物の安定生産に最も大きく作用する。"1
その有機物の役割は以下の3点が代表的です。
1. 土壌の団粒構造を改善し、保水性・通気性を高める
有機物は、土壌の団粒構造を形成し、保水性や通気性を改善します。
土壌の空気を含みやすくし、排水性や通気性を向上させます。
雨水を吸収して蓄える保水性も高まり、乾燥や洪水など水害対策にも役立ちます。
2.微生物の活発化を促し、病害虫を抑制する
有機物は、微生物のエサとなり、その数を増やします。
中には病害虫を抑制する有益な微生物が豊富に存在します。
これにより、稲作における病害虫の発生を抑えることができます。
これらの作用によって、土壌の肥沃度が高まります。
3.化学肥料に頼らず栄養素を稲に供給する
有機物は、稲の生育に必要な窒素、リン酸、カリウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。
微生物によって分解されると、徐々にこれらの栄養素が土壌中に溶け出し、稲の根から吸収されます。
有機物を活用することで化学肥料に頼らず、環境負荷を減らす持続可能な農業を目指すという方法もあります。
このような作用があります。
稲作において、有機物は土壌の肥沃度を高め、稲の健康な成長をサポートしてくれるということです。
有機物による土壌改良について
土壌改良の鍵
有機物の種類とその効果
有機物の身近な例として、堆肥・緑肥が挙げられます。
「堆肥」は、農場や家庭から出る有機廃棄物を堆積させて発酵させたもので、土壌に様々な栄養素を提供します。
これにより、土壌の保水性や通気性が向上し、根の成長が促進されます。
「緑肥」として使用される豆科植物は、土壌に窒素を固定し、後の稲の成長に必要な窒素を供給します。
このように有機物には様々な種類があります。
それぞれに異なる特徴があり、稲作における土壌改良に大きな役割を果たします。
適切な有機物を選ぶことで、土壌の質が格段に向上します。
有機物の一例
堆肥
特徴 | 動植物の残骸が分解されてできる有機物。 多様な栄養素を含み、土壌の肥沃度を高めます。 |
メリット | 土壌の保水力と通気性を改善し、長期的に土壌の質を向上させる。様々な栄養素が含まれているため、土壌にバランスよく栄養を供給できます。 |
デメリット | 未熟な堆肥は、悪臭や有害物質が発生するおそれや、病原菌や雑草の種を含む可能性があります。 |
緑肥
特徴 | 大豆やレンゲやクローバーなどの「豆科」の作物を栽培し、その後に土に混ぜ込む農業技術。 緑肥植物は、土壌に直接窒素を供給することができます。 |
メリット | 土壌の保水力と通気性を改善し、長期的に土壌の質を向上させる。 様々な栄養素が含まれているため、土壌にバランスよく栄養を供給できます。 |
デメリット | 一部の作物は特定の季節にしか植えられないことがあります。また、成長してから土に戻すまでの期間が十分に必要です。 |
腐葉土
特徴 | 落ち葉を分解してできる有機物。 軽くて通気性が高く、土壌の保水力を改善します。 |
メリット | 軽い質感で根の成長を助け、土壌の保水力を高めます。 pH値が中性に近いため、多くの植物に適しています。 |
デメリット | 栄養価は他の有機物に比べて低いため、単独では栄養不足になることがあります。 |
動物性堆肥
特徴 | 家畜の糞から作られる有機物。 高い栄養価を持ち、特に窒素、リン酸、カリウムが豊富です。 |
メリット | 土壌に速やかに栄養を供給し、生産性を高める効果があります。 多様な作物に適用できます。 |
デメリット | 生の糞は病原菌を含むリスクがあり、また、過剰に使用すると栄養過多になる可能性があります。 |
稲わら
特徴 | 稲の収穫後に残る茎や葉の部分。 有機質が豊富で、微量な窒素、リン、カリウム、ケイ酸などの栄養素を含んでいます。 |
メリット | 微生物の活動を促進し、土壌の生物多様性が向上し、健康な土壌環境が維持されます。 病害虫抑制も期待できます。 |
デメリット | 分解に時間がかかるため、即効性は期待できません。分解過程で微生物が窒素を大量に消費することで、土壌中の窒素が一時的に不足することがあります(窒素飢餓) |
これらの有機物は、適切に利用することで土壌改良に大きな効果を発揮しますが、使用する際はその特性を理解し、目的に合わせた選択が重要です。
また、組み合わせて使用することで、より効果的な土壌改良を行うことができます。
(※ものによっては分解が不十分なまま稲作を開始すると稲の生長に悪影響を及ぼす可能性があるので、施用時期には注意しましょう。)
無機物とは・・・
では「無機物」とは?
無機物の稲作土壌への影響
無機物の役割
一方、「無機物」とは、生物由来でない物質です。
具体的には、化成肥料、鉱物、二酸化炭素、水、空気などがあります。
無機物は、分解されてもその本質は無機物のまま変わらず、土壌の中で静かにその役割を果たします。
- 土壌の水はけや保水性を調節し、稲の根がしっかりと土に定着するための土壌構造を形成します
- 無機物中に含まれるミネラルは、稲の成長に必要な微量元素を提供します
このようにして、有機物と無機物は、それぞれが独自の方法で稲作に貢献し、農業のサイクルの中で絶えず働いています。
結局のところ、有機物と無機物のバランスが稲作における成功の秘訣です。
これら二つが適切に組み合わさることで、土壌は最適な状態に保たれ、稲はその恵みを存分に受けることができます。
有機物・無機物を使った土壌改良
初心者でも大丈夫!
有機物・無機物を使った土壌改良方法
ここまで学んだ土壌改良についてまだ難しく感じるかもしれません。
しかし、安心してください。
有機物を上手に利用して、豊かな土壌を作り、理想の稲作を目指しましょう!
初心者でも取り入れやすい、稲作における有機物活用の具体的な例をいくつかご紹介します。
「有機物」による土壌改良の例
- 有機物名:堆肥
- 期待する効果:土壌肥沃化
- 準備方法:家庭や農場から出る有機廃棄物を発酵させる
- 使い方:土壌に均等に散布し耕す
- 注意点:発酵が不十分な堆肥は病原菌を含むリスクあり
- 有機物名:緑肥(豆科植物)
- 期待する効果:土壌構造改善 窒素分の補給
- 準備方法:稲作終了後に豆科植物を播種
- 使い方:成長後に刈り取り、土に混ぜ込む
- 注意点:花が咲く前に処理すること
- 有機物名:腐葉土
- 期待する効果:保水性向上
- 準備方法:枯れ葉を集めて発酵させる
- 使い方:耕す際に土に混ぜ込む
- 注意点:過剰使用を避ける
- 有機物名:動物性堆肥
- 期待する効果:栄養分の補給
- 準備方法:牛舎や堆肥販売業者から購入する
- 使い方:土壌に均等に散布し耕す
- 注意点:発酵が不十分な堆肥は根を傷めるリスクあり、過剰使用を避ける
- 有機物名:稲わら(+モミガラ)
- 期待する効果:土壌改良
- 準備方法:稲わら:稲刈り時コンバインから排出される、モミガラ:調整時に出たものを持ってくる
- 使い方:(できれば秋のうちに)耕運して土中にすき込む
- 注意点:均等に分散させること
「無機物」による土壌改良の例
- 無機物名:多木化成
- 期待する効果:栄養補給
- 準備方法:市販の肥料を購入
- 使い方:成長期に適量を散布
- 注意点:肥料焼けを避ける
- 無機物名:綜合ミネラル宝素
- 期待する効果:不足しがちなケイ酸・微量要素の補給
- 準備方法:取扱店から購入
- 使い方:時期を問わず、均一に散布
- 注意点:特になし
「有機物」×「無機物」による土壌改良の例
- 堆肥と化学肥料の併用
- 改良方法: 堆肥(有機物)を土壌に混ぜ込み、微生物活動を促進し、その後、化学肥料(無機物)を散布して即効性の栄養補給を行う。
- 利点: 堆肥による土壌の構造改善と化学肥料による即効性の栄養供給が同時に行われ、土壌の肥沃度が向上する。
- 注意点: 化学肥料の過剰使用を避け、堆肥の成熟度を確認する。
- 緑肥と綜合ミネラル宝素の併用
注意事項
- 有機物・無機物の種類によっては、成分や効き方が異なるので、注意が必要です。
- 稲の生育に影響を与えないように、適切な時期に施用する必要があります。
- それぞれの効果や注意事項を理解し、地域の慣行や土壌診断に基づいて施用方法を検討することが重要です。
有機物と無機物の適切な活用は、初心者にとっても大きな自信につながります。
初心者の皆さんも、このバランスを学び、実践することで、稲の健全な成長を促し、最終的には豊かな収穫を手に入れることができます。
参考論文のお言葉を借りると以下の通りです。
一般的な普及書などで見かける「有機物を施用すれば土壌微生物が増える」,「堆肥を入れれば土壌の養分保持能や団粒が増える」などといった,単純化されたイメージは,農耕地土壌への有機物施用を推奨する“きっかけ”としては良いかもしれない.しかしながら,どのような有機質資材(構成成分,生分解性,機能性)を,いつ(施用時期),どのくらい(施用量),どのような方法(施用方法や混合深度)で土壌に投入するかなどの因子に基づき,どのような機能や土壌改良効果を期待するのかを明確にすることが必要である2
まとめ
有機物と無機物は、稲作においてそれぞれ異なる役割を果たしています。
それぞれの特性を理解し、適切な方法で活用することで、土壌の肥沃度を維持し、良質な収穫を得ることができます。
有機物と無機物のバランスを意識しながら、稲作に取り組んでいきましょう。
もう耳にタコかもしれませんが、
初心者にまず必要な知識は、「土壌を正しく知り、正しく管理」です。
土壌の環境を整え、稲作の基礎を固めることが、豊かな収穫への第一歩です。
引き続き、一歩ずつ、確実に進んでいきましょう!
シリーズについて
「年齢不問!稲作で食べていく!農業0~1年生×稲作×土づくりをしっかり学ぶ15本」
このシリーズは、稲作について何から手をつければよいか分からない農業未経験・稲作農業0〜1年生のための基礎ガイドを投稿しています。
なんとなく稲作農業に興味が湧いてきた、異業種から農業に意を決して転身、代々農家の後継ぎを決意、農業無知で稲作農家に嫁ぐ・・・などきっかけは様々でOK。
基本から学ぶ土作りのステップをなるべく楽しく学べて実践へ活かせるように、わかりやすく解説していきます。
稲作初心者の方のお役に立てたら何よりです。
百津屋商店 代表:和田 一男
稲作の教科書に載っていない秘訣を伝授します!
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